「では、次は押端奏さん、お願いします」



そう言った司会のタレントさんの言葉に軽く頷いて、センターのマイクに近づいた。


あたしの前にそこに立っていたさゆみちゃんと、一瞬だけ笑みを交わす。



さっきと同じステージなのに、審査を受ける全員で並ぶと、何だか一気に空気が明るくなるから不思議だ。



スタンドマイクの前に立って、客席を見る。



少し高い位置にあるこの場所は、鶯加の体育館とも音楽室とも全然違うのに


何となくあの文化祭を思い出した。



「では、こちらから質問を……と思ったのですが、押端さんに推薦者の方からメッセージが届いていますので、先にお読みしますね」


「あっ、はい」



あたしは、にっこりと頷いて司会をする人を見た。



質疑応答の形式で進んできたみんなのアピールタイム。


でも、この場合はどうやってアピールするんだろう?



愛想良く聞いてれば良いってこと……?



……って、そんなわけないよね。



でも

ちゃんと聞いてたら、誰が推薦してくれたのかがわかるかもしれない――――



そう思いながら、あたしは司会のタレントさんに体を向けた。



「では、いきます。」