「オーディションって、その人の人生を変えちゃう出来事になるかもしれないんだよ? それも、ものすっごい方向に!

だから、大切に考えてる人のことじゃなきゃ、応募なんてできないって!」



言われてみれば、そうかも……。



だとしたら、やぱり彩乃かなぁ?



考えれば考えるほど、わけがわからない。



思わず眉間にしわを寄せたあたしを見て、さゆみちゃんが「あっ」と声を上げた。



「どうしたの?」


「推薦した人、もしかしたら今日来てるんじゃない?」


「どうして?」


「お兄ちゃんもそうなんだけど、推薦者は今日の観客として招待されてるんだって!休日だから見に来れるって、喜んでたもん。

奏ちゃんの推薦者も、もしかしたら来てるんじゃない? せっかくだし、ダメ元で探してみたら?」



さゆみちゃんは、本当に楽しそうに笑った。



まだ誰だかわからないあたしの推薦者……


来てるとしたらもしかして……さっきの?



…………いや、まさかね。



自分で想像しておきながら、浮かんできた顔に小さく苦笑いをした。



だって、あたしのことなんて何とも思ってないはずだもん。



「みんなの発表が終わったら、1回全員でアピールタイムの収録があるでしょ?

その後に審査も兼ねた休憩時間があるから、そこで探してみたら?」