「終わったぁ……」



控室に戻って、用意されてたイスに座った。



あたしみたいに出番の終わった子は、それぞれ音楽を聞いたり、ケータイで誰かに連絡をとったりしてる。



本番前の時と違って、仲良くなって会話をしてる人もいるから、少しにぎやかな感じもした。



何かこの感じ、高校の教室に似てるかも――――



よそよそしい空気も感じるけど、同じ緊張を味わったあたし達の間には変な連帯感みたいなものが生まれてて……


大学の教室と違って狭いこの部屋は、少し前に離れた懐かしい雰囲気を思い起こさせた。



「まさか、ね……」



こんなことを考えちゃう原因は、もう1つ……。



ちらっと目に入った客席の一角。


前の方の、あたしから見た右の端。



何となく視線を送った先に見えたその人が、少し懐かしい思い出になりつつあったあの人に似てる気がして


思わず顔が熱くなるのを感じた。



まだ、全然懐かしい記憶になんてなってないんだ……――――



はぁあああ。



「ねぇ、さっきの歌、素敵だったね!」



溜息を吐いた瞬間に、隣からふわふわした声が聞こえた。