電子ピアノ。
小さめのホワイトボード。
白い机。
イスが全部で3つ。
白ばっかのこの部屋には、雨の音なんて聞こえないし、電子ピアノの黒が浮いてる。
「お待たせ。はじめましょうか」
「あっ……はい!よろしくお願いします」
あたしは慌てて立ちあがって、先生に頭を下げた。
レッスンが終わってから、あたしは何気なくケータイを開いた。
待ち受けには、電話のマークが浮かんでる。
「……2件も?」
誰だろう……?
そう思って、あたしは履歴を確認した。
「知らない番号……」
「どうしたの?」
小さい声で呟いてたあたしに、先生が首を傾げた。
まっすぐに伸びた茶色の長い髪が、さらっと揺れる。
羨ましい年齢の重ね方をしてる先生は、何歳なのか全く想像がつかない。
「あ、知らない番号から2回も着信があって……」
「どれ? 042……うーん、私も知らない番号だけど、東京からかけてきてるみたいね。
2回かかってきたのなら、何か用事があったんじゃない?呼び出しの時間も長いみたいだし。
かけ直してみれば?」