「東京か……。居酒屋も、遊ぶ場所も何でもたくさんあって、大学生には最強の環境なんだろうな。
良い男、ちゃんと捕まえてこいよ」
先生は、そう言ってにっこりと微笑んだ。
ぎこちない笑みを返すのが、あたしの精一杯。
先生は、あたしの気持ちをわかっててそう言った……?
それとも、何となく言葉をつなごうって思ってそう言った……?
どっちにしても、あたしにとってそれは、ただの終わりの言葉にしか聞こえない。
「初めのうちは授業もたくさんあると思うけど、頑張れよ。ときどき連絡でもくれれば嬉しいし。
俺も、もし東京に出張で行く機会があったら、連絡するよ」
「ありがとうございます」
少し逸れた話に、少しだけほっとした。
これで最後なんだもん。
ちゃんと、先生の顔を見ておかなくちゃ。
そう思って、運転席に顔を向けた。
相変わらずにっこりと微笑む先生は、チーズケーキもエスプレッソもとっくに空にしてるみたいだった。
「あ……」
そう呟いた先生の視線を追うと、窓に小さな水滴がいくつか見えた。
「雨……か」


