透明の小さなスプーンを差し出してから袋を片付け始めた先生に

思い切って尋ねた。



「ん?さっきも言っただろ? 合格祝いと卒業祝い。

前に奏と一緒に食べたのを思い出して、この状況ならこれだ、って。

……それに、感謝の意味も込めて」


「感謝?」



そう言いながらチーズケーキのビニールの蓋を開けた先生に倣って、あたしも同じように蓋を開けた。



「この歳で、この辺で1番の進学校に来て、3年生の英語も担当して……。

形だけとはいえ、顧問みたいなこともやって。

勉強は大学時代も、それまでもそれなりにやってきたけど、それを自分1人でやるのと年下相手に教えるのとでは話が違うし……。

自分が捻くれた学生生活を送ったせいもあって、不安だったことも少しはあるんだよ」



「全然そんな風に見えなかった……」



びっくりして先生を見上げると、目の横にしわを寄せて笑った。