恋歌 〜secret love〜

「いやぁー、やっぱ奏は歌上手いよなー。
この後、みんなでカラオケでも行っちゃう?」



完全に演奏が止まったところで、慶介が口を開いた。



「ダメだ、進が歌下手だから」


「慶介と違って、その他は完璧なのに……。もったいないよなぁ」


「卓哉も勇人も、煩いよ……」



静かに反論する進を見ながら、奏が小さく笑った。



歌いきった安心感からか……?


あまりにもその表情が穏やかで、自然に俺の頬まで緩んだ。



「もうすぐ暗くなるし、カラオケならまた今度にしろ。

進もその方が嬉しいだろうし……今日はもうそろそろ帰ったらどうだ?」



時計を見ると、短針は5を指し掛けてるところだった。



部活だってそろそろ終わる頃だろうし

まだ3月の今、これ以上生徒を引き止めるのも良くない気がする。



「じゃあ、荷物片付けて帰りましょ?

楽器は本人のじゃなかったから……まぁちょっとアレだったけど、久々にみんなで騒げて楽しかったし」


「そうだね。あたしも何かすっきりしたよ。

これで、いろいろと卒業できそう……」



桐渓さんの言葉ににこっと笑った奏が、そう言ってステージを降りた。



卒業……か。