ついつい大きな声で返したあたしを、彩乃がくすくす笑う。



「そんなに笑わなくても良いじゃない……」


「ごめん、ごめん。だって、奏があんまりにも可愛いから」



笑いを堪えようとしてるのか、少し不自然なリズムで彩乃の肩が動く。



「ありがと。そんな風に言ってくれるのは彩乃だけだよ」


「そんなことないでしょー。
で、どうなのよ? 最近、彼とは何か進展ないの?」


「あぁ……」


「授業を始めますよ。皆さん、そろそろ席に戻って下さい」



彩乃の言葉に返事をしようとしたところで、頼城先生が教室に入ってきた。


「あとでね」と、さっと手を振りながら去っていく彩乃に、軽く微笑みを返す。



ここから眺める先生の姿は、文化祭前と何も変わらない。



敬語を使うところも

相変わらず毎日スーツなところも



変わったことと言えば……、話す回数が減ったことくらいだ。