「ありがとうございます。あたしも、歌えて良かった」



出来る限りの笑顔を向けると、頼城先生も少しぎこちなく笑ってくれた。



「……奏は、本当に歌が好きなんだな。歌うのも、作るのも」



握った手をゆっくりとはなしながら、頼城先生が言った。



「え……? あ、はい。
昔は、作曲のコンクールにも何度か出てたんですよ」



どうしてだろう。


こんなことを言うつもりは全くなかったのに、口が自然に動いた。



「もう、作らないのか?」



先生が、床を見つめながら言う。



「……機会があれば、作りたいですね。歌いたい……」


「そうか」



視線をあたしに向けた頼城先生が、ゆっくりと口を開いた。



「また、機会があると良いな。俺は……好きだよ、奏の歌」



まっすぐな瞳から目が放せなくなった。



「ありがとう、ございます……」




この瞬間……

あたしの頭の中で、先生の言葉がぐるぐると回り続けた。