「勇人もさー、彩乃にいっつも叩かれて大変なんじゃない?」
「大変だよー。でも、彩乃って意外にツンデレ……」
勇人が言い切る前に、彩乃がばんっ、と背中を叩く。
「馬鹿なこと言ってないで早く歩きなさいよ!
最近みんな図書室使うから、急がないと勉強する場所なくなるでしょ?」
呆れたようにそう言った彩乃に、勇人とあたしはおとなしく従った。
文化祭が終わってからもう2ヶ月近く経った。
校庭に散った落ち葉。
すぐに落ちる太陽。
冷たい空気。
漂う雰囲気が全部、もうすぐ冬が来るんだって物語ってる。
冬が来る――――
それはつまり、あたし達にとっては、受験が始まるってこと。
部活も生徒会も引退した3年生が、放課後の図書室に入り浸るのも
当たり前の光景になっていた。