気付けば、視線の先には奏がいた。

気付けば、心はメロディーで溢れていた……


気付けば、透き通る声が全てを支配しているようだった。



でも、俺はその心の片隅にも

光の世界の片隅にも

入り込むことはできない気がした。




恋の歌だと言うから

甘い雰囲気の漂う、よくテレビやラジオで耳にする類いのものだと思った。



でも実際に届けられたのは……


強くて儚い、“恋歌”だった。



静かだった体育館に、大きな拍手が溢れる。




ほっ、としたように微笑むメンバーを、俺も拍手で見送った。