「ねぇ、あの子、歌うと声変わるんだね」


「押端さんだよね?あの子がバンド組んでること自体が意外かも」


「確かに!何か割と静かな人だって思ってた」



囁き合う小さな声が、ときどき耳に入る。


今まで学校のほとんどの人間が奏の魅力に気付いていなかったことに

何だか優越感を覚えた。



そうは言っても、俺だって完全にわかっていたわけじゃない。



音楽室で練習していただけではわからなかった。



ステージ。

そんな、特別な場所。


スポットライトという特別な光。


観客という、特別な存在。



それら全てが、奏の潜在的な力を引き出しているように……眩しかった。



たかが高校の文化祭。

ただの高校の体育館。



そんな何でもない空間が

特別に見えたのは、俺だけじゃないはずだ。



そう、思いたかった……――――