「良かったわね、奏。 頼城先生に彼女がいなくてっ」



隣でにやっと笑う彩乃を見て、あたしは軽く溜息をついた。



「でもあたしには関係ないし……まぁ、正直少しはほっとしてるけど」


あれから

寄り道をしたいって言った勇人達と別れて、あたしは彩乃と一緒に帰っていた。



「でもまぁ、好きな気持ちを諦める必要がないってわかった分だけ良かったとは思うわよ?これから何かするかしないかは別にして……ね」



そう言って、彩乃がさっきと違う綺麗な表情で微笑む。



「あたしね、付き合うとか付き合わないとか……、そういうことはとりあえず考えないようにしようって思うの」



彩乃の顔を見ることはできなかったけど、あたしはゆっくり口を開いた。



「好きだけど……好きだから、そのことで迷惑はかけたくないなって思って。

でもその代わりに、頼城先生の中に、ほんの少しでも良いからあたしの存在を置いてもらえりようになりたい……とは思ってる。恋人としてじゃなくて、可愛い生徒として先生の記憶に残してもらうの。

まぁ、何ができるかはわかんないけど……。先生の話を一生懸命聞いたり、できることに協力したり……生徒としてできる精一杯のこと、頑張りたいなって思ってる」