「ま、勇人の作る歌も好きですけどね。ここは、奏に譲ってみるのも良いんじゃないですか?」



頼城先生は、勇人に向かって微笑んだ。



あたしにとっては、これは嬉しいような、厳しいような……

不思議な提案だった。



自分じゃない誰かに聴かせるための、歌を作る。



そんなこと、今まで一度もやったことがない。



昔、コンクールで披露してたのは、演奏するための曲。



歌う曲じゃない。



だから、歌うための曲を一度も他の人に評価してもらったことのないあたしは

はっきり言って、自信がない。




「奏、やってくれるか?」