「奏ちゃん。恥ずかしがらなくて良いから、自由に、好きなように歌ってね」


「そうそう!こんなに明るい曲なんだから、楽しく歌ってよー」



阪崎くんに続いて仁志くんもそう言った。


そのまま、曲に合わせて手を叩き始める。


他のみんなも、それに続いた。



でも……それでもまだ、緊張は溶けない。


だけど、笑顔であたしの歌を待ってくれてるみんなを見たら

素直に、歌おうって、思えた。



あたしの声が入らないまま淋しく流れていた曲は、すでに2番に差し掛かってる。



あたしは、大きく息を吸い込んだ。


そのまま、目を閉じてリズムをとる。



歌おうと思ってからここまでは、ほぼ無意識。



体の内側から沸き上がってくるこの流れを、あたしは止められない。


止めたくない。



気付けばあたしは、自然な笑顔と一緒に歌を奏でていた。