「こんな時間に一人でいるのは危ないよ?」
優しい言葉と同じ表情で笑みを浮かべる彼に、何も言えなくなる。まるで動けないように魔法をかけられているみたいだと思った。いつもなら逃げる身体も不思議と今は固まったままで。それどころか彼にもたれ掛かりたくなる。
「まあ、俺が言うのもなんだけどね」
突然低い声で呟いた彼は、私を腕の中へと引き寄せた。腰を支えられ、頭が傾くように固定させられる。
それから耳元で囁かれた言葉が、私を支配していた。
「大丈夫。すぐに済むから」
何が済むのか、そんなことを聞ける状態じゃない。身体が痺れて感覚がなくなる。首筋をその舌で味わうように舐められた、そう思った瞬間――。
「いっ……!?」
気が付くと身体に激しい痛みが走っていた。首から伝わるそれは全身を大きく震わせる。痛いはずなのに、血液を吸い取られる感覚が徐々に身体の力を奪っていく。不思議と嫌ではなかった。寧ろ永遠に続けばいいとすら思ってしまう。
……吸血鬼。
不意に私はその単語を思い出した。薄れていく意識の端で、懐かしい夢が私の意識を反らす。
「雛の……王子、様」
「え?」
声が出たと同時に、首から何かが抜き取られた気がした。だけど私にはそこまでが限界で、立っていることが出来なくなる。
今日は先生に怒られて疲れたのかも……。
それだけ考えて、私は意識を手放していた。
優しい言葉と同じ表情で笑みを浮かべる彼に、何も言えなくなる。まるで動けないように魔法をかけられているみたいだと思った。いつもなら逃げる身体も不思議と今は固まったままで。それどころか彼にもたれ掛かりたくなる。
「まあ、俺が言うのもなんだけどね」
突然低い声で呟いた彼は、私を腕の中へと引き寄せた。腰を支えられ、頭が傾くように固定させられる。
それから耳元で囁かれた言葉が、私を支配していた。
「大丈夫。すぐに済むから」
何が済むのか、そんなことを聞ける状態じゃない。身体が痺れて感覚がなくなる。首筋をその舌で味わうように舐められた、そう思った瞬間――。
「いっ……!?」
気が付くと身体に激しい痛みが走っていた。首から伝わるそれは全身を大きく震わせる。痛いはずなのに、血液を吸い取られる感覚が徐々に身体の力を奪っていく。不思議と嫌ではなかった。寧ろ永遠に続けばいいとすら思ってしまう。
……吸血鬼。
不意に私はその単語を思い出した。薄れていく意識の端で、懐かしい夢が私の意識を反らす。
「雛の……王子、様」
「え?」
声が出たと同時に、首から何かが抜き取られた気がした。だけど私にはそこまでが限界で、立っていることが出来なくなる。
今日は先生に怒られて疲れたのかも……。
それだけ考えて、私は意識を手放していた。
