「ところで、葵ちゃんにしては珍しいね」
少し落ち着いたのか、雛が声を発して不思議そうに私を見つめてくる。
「何が?」
「居眠り。寝ることはあっても一瞬だけだから。今まで先生に怒られるまで寝てたことなんてなかったでしょ?」
「あー、まあ、確かに」
一応ばれないように気を付けて寝てたつもりだし、授業内容はノートに書けてないとテスト期間に困るからねー。前に一度ノートの提出があった時は書けてなくて、焦ってたこともあったけ。
あまり思い出したくない記憶は端に寄せておき、私は雛からの質問に答えることにした。
「懐かしい夢を見てて、それでかもしれない」
「懐かしい夢?」
「うん、保育所に通ってた頃のやつ。ほら、雛がお嫁さんになるとか言ってた」
本当に懐かしい夢だった。今は十六歳だから、十年ぐらい前だっけ。あの頃から雛は皆に美少女だって騒がれてたなー。
「お嫁さんって?」
「誰のだったかは忘れたけど、十六歳になったら結婚するんだーって。雛、あの頃話してくれてたでしょ?」
「え?そうだったかなー」
「あーあ。約束してた子、可哀想。今頃雛と結婚したいって捜してるかもよ?」
「えー」
わざとからかうように雛に言えば、雛も合わせるように困った表情をつくる。
だけどお互いにすぐ笑って、別の話題に移っていた。そう。雛も私も、本当にその約束していた子が会いに来ないと知っていたから。もう十年以上も前の話で、雛が忘れるぐらいの思い出だ。当然相手も忘れている。覚えていたとしても、良い思い出だったと感じる程度のものだろう。
「雛」
「うん?」
話していた途中で名前を呼んで、私は雛を見た。
少し落ち着いたのか、雛が声を発して不思議そうに私を見つめてくる。
「何が?」
「居眠り。寝ることはあっても一瞬だけだから。今まで先生に怒られるまで寝てたことなんてなかったでしょ?」
「あー、まあ、確かに」
一応ばれないように気を付けて寝てたつもりだし、授業内容はノートに書けてないとテスト期間に困るからねー。前に一度ノートの提出があった時は書けてなくて、焦ってたこともあったけ。
あまり思い出したくない記憶は端に寄せておき、私は雛からの質問に答えることにした。
「懐かしい夢を見てて、それでかもしれない」
「懐かしい夢?」
「うん、保育所に通ってた頃のやつ。ほら、雛がお嫁さんになるとか言ってた」
本当に懐かしい夢だった。今は十六歳だから、十年ぐらい前だっけ。あの頃から雛は皆に美少女だって騒がれてたなー。
「お嫁さんって?」
「誰のだったかは忘れたけど、十六歳になったら結婚するんだーって。雛、あの頃話してくれてたでしょ?」
「え?そうだったかなー」
「あーあ。約束してた子、可哀想。今頃雛と結婚したいって捜してるかもよ?」
「えー」
わざとからかうように雛に言えば、雛も合わせるように困った表情をつくる。
だけどお互いにすぐ笑って、別の話題に移っていた。そう。雛も私も、本当にその約束していた子が会いに来ないと知っていたから。もう十年以上も前の話で、雛が忘れるぐらいの思い出だ。当然相手も忘れている。覚えていたとしても、良い思い出だったと感じる程度のものだろう。
「雛」
「うん?」
話していた途中で名前を呼んで、私は雛を見た。
