吸血鬼の花嫁


それから少しずつ、話を途中で句切るようにして喋り出してくれた。懐かしい記憶を呼び覚ますように、ライルド王子はゆっくりと語り始める。

「初めて僕に親しくしてくれたから。王子である僕に」

一言一言、噛み締めるような話し方が私の意識を惹きつけた。そして、そこまで聞いてやっとライルド王子が質問に答えてくれているのだと気が付く。その言葉には重みがあり、今、私は大事な話を聞いているのではないかと感じられた。
それと同時に、切ない気持ちが心に宿る。今まで王子がどんな扱いを受けて育ってきたのか、何となくでも想像出来たからだ。本やテレビなどの世界からでしか”王子様”の生活は想像できない。ましてやライルド王子は吸血鬼だ。だけど第一王子と言っていたからには、教育や環境は厳しかったのでないだろうか。周りにも王子様だからという理由で距離をおかれていたのかもしれない。
そんなふうに、私は漠然と思ってしまった。

「僕が吸血鬼だと言ってもそれは変わらなかった。不思議な話だろ?雛には人間の常識がないんだ」

多分、王子にとって雛は、初めて心を許せた他人で。初めて本当の意味で友達になれた女の子だったんだ。
嬉しそうに話すライルド王子は幸せそうだった。

「何度か会ううちに雛に惹かれて。ああ、僕に必要なのはこんな女の子なんだって思った。それなのに」

王子はそう言って、表情を暗くする。

「約束していた女の子は俺のことを覚えていなかった。覚えていたのは俺だけ……」
「…………」