吸血鬼の花嫁


「王子は、どうして雛なんですか」
「え?」
「吸血鬼の王子様なら、もっと良い条件の花嫁候補がいくらでもいるんじゃないかと思って」

人間の、しかも十年以上も前の小さな女の子に。そこまでしてこだわる理由は何なのか。単純に興味があった。
……て、何を言ってるんだ私は。そんなことを聞いてどうするつもりなんだ?でしゃばるにも程があるだろう。

「いや、まあ関係ないんですけどね。無理に教えて欲しいとは言いませんし」
「…………」

ライルド王子は黙って目線を下に向ける。私もそれ以上何も言えなくて、王子から距離をとった。
雛と王子の仲を取り持つなんて、本気で協力する気がないくせに。怒るだけ怒って理由は聞こうとする。私……最低だ。

「すみません、変なこと言って。私、ちょっと出掛けてきますね?」

心の中に土足で踏み込まないよう、私は王子に背を向けて扉へ向かう。息苦しくなった空間に堪えられず、少し時間をおこうと考えていた。

「…………」
「王子?」

なのにそんな私の腕を、ライルド王子は無言で掴んで前に進めないよう引き止める。真っ直ぐに見つめてくる青い瞳とその行動に、緊張感が高まった。冷たい手の感触が私の心に火を灯し、初めて出会った時を思い出してしまう。

「横に、座って?」
「…………」

言われた通りベッドの空いた場所に腰を降ろし、王子の表情を伺った。王子は掴んでいた手を放し、深く、短い溜め息を吐く。

「雛はね、僕の初恋なんだ」