吸血鬼の花嫁
















「このバカ王子!出てきなさい!」

家に帰り部屋の扉をこじ開け、私は怒りをぶつけるように大声を張り上げていた。
寝起きだったのか左右に体を揺らし、一匹のコウモリがベッドに向かって降りてくる。ベッドの上にたどり着くと小さな音を起て、煙りが舞うのと同時にライルド王子が姿を現せた。

「……葵?」

完全に開いていない瞼の奥から見える青い瞳が私を捕らえる。細くて柔らかそうな栗色の髪。体温を感じさせない白色の肌。それと対極するように全身を黒一色で彩った衣装。吸血鬼である目の前の彼、ライルド・ルノア・マディオン王子と出会ったのは昨日の夜のことだ。
偶然出会った彼が我が家に住むと決まったのも昨日の夜。コウモリに姿を変えられるからと言い、屋根裏に寝床を確保していた。
私は王子の付き人であるクヤン・サリエフさんの視線も手伝って、王子様である彼にそんな場所に住まわせることは出来ないと一度訴えた。だけど王子は断固として受け入れてくれなかった。
仕方なく寝る時だけは屋根裏で過ごしてもらうことになり、申し訳なく思っていたのだが今はそんなこと関係ない。
いくら吸血鬼の第一王子だからって、やって良いことと悪いことがある!雛に関しては明らかに後者の方だ!