意味もなく首を回してみたり、腕を振ってみたり、髪を弄ってみたりと落ち着かない。待ち合わせ場所に着いてからの約数十分、私は居心地の悪さに早くも帰りたい気持ちでいっぱいだった。

「そもそもなんて切り出せば良いのか……」

私が確認したいことは大きく分けて三つだ。
一つは変更した誕生日の予定をどうするか。昨日は授業中に爆睡して怒られる、なんて失態を見せてしまったから、この埋め合わせは絶対にしないと。
二つ目はライルド王子との思い出について。花嫁になる約束を忘れているのは昨日の会話で立証済みだ。だから今回は昔に、誰かと遊んだことや話をした思い出はないかと聞く必要がある。もしかしたらそれがきっかけで思い出す、かもしれない。
そして残る最後の一つ。これはとても重要で、一番知りたいこと。
昨日雛は王子に会って何があったのか、その話だ。
王子の話からすると雛は相当恐がっていたらしく、話を聞いてもらうどころの話じゃなかったらしい。そこまでになった原因が何なのか、そこを突き止めないことには本当にこのまま王子に協力して良いのか判断出来ない。
なんて、頭の中では冷静にまとめることが出来るんだけどねー……。

「果たしてこれを上手く伝えられるのか、それが問題だ……」
「葵ちゃーん!」
「ん?」

私の名前を呼ぶ声が聞こえて前を見ると、元気よく足音を起てて走ってくる女の子がいた。右腕を大きく左右に振り、満面の笑みが愛くるしい。