私、紺野葵は悩んでいた。自室のベッドの上で、掛け布団にくるまれながら。
別に眠りたいから、などと言う理由ではなく、親友の未来について真剣に考えていたからだ。幸い今日は学校もバイトも休みで、今は朝の時間帯。誰にも邪魔されることなくゆっくり考えられる。

「雛に会わせるべきか会わせざるべきか。それが問題だ」

どこかで聞いたことのあるような台詞を呟くも、良い考えが浮かぶはずもなく。

「どうしよう」

悩みの種は大きく育つばかりで全く消える気がしない。こんな時の対処方法は直感に従うのが一番だろう。
それにやっぱり、本人の意志を確認するべきだと思うし。
どうせ協力するなら、雛自身が一番望む形にしてあげたい。

「……よし!」

私は掛け布団をめくり上げ、ベッドから飛び出した。決意した気持ちが鈍らないように、気合いを入れて電話をする。もちろん、相手は今から会う予定の親友、如月雛だ。

「雛!おはよう!」
「……どうしたの?」
「え」

あれ?挨拶してからの第一声が疑問文っておかしくないか?
そんな、心の声を察してくれたのかは不明だが、雛は続けて声を発していた。

「声の調子がいつもより高いし、何かあったのかなーって」

あ、なるほど。
雛に指摘されて初めて気が付き、私は素直に答えることにする。

「実は相談があって」
「相談?」

電話越しでも首を傾け、不思議そうにする親友の姿が目に浮かび少しだけ笑ってしまった。