吸血鬼の花嫁









ライルド王子が話してくれた内容はこうだった。

『十六歳になったら迎えにくるね』

そう言って雛と別れてから月日が経った今日。約束通り雛を迎えに行った。聞くところによれば、当時すぐにでも婚約者として国に連れて帰ろうとしていたらしい。
それを知っていたのかはわからないが、雛本人は花嫁になるには十六歳になってからでないと駄目だとライルド王子の申し出を断った。だから王子はそれまではと、雛の希望を優先させ、時が経つのを待つことにした。なのに再会した雛は王子を覚えておらず、吸血鬼だと話しても信じてくれない。
脅える様子の雛に完全に嫌われないよう、ライルド王子は後日雛の前に姿を現すことにした。それまでの間やこれからはどうしようかと考えていたその時、王子の目の前に歩いてくる女の子の姿が見えた。辺りには誰もおらず、その子は一人だけ。そんな襲いやすい獲物を見過ごすまいと近付き、血を吸った。
けれどその子が呟いた言葉が雛の名前だった。もしかしたら雛の知り合いなのかも知れない。そう思った王子はその女の子を抱え、彼女の家を探しあてて部屋に運んだ。そしてもしその子が、雛について何か知っているのなら、自分を覚えていない雛の記憶を思い出させる方々が見つかるかもしれない。そう思ったのだ。
案の定、目覚めた女の子は自分の存在を知っており、おまけに雛と最も親しいであろう人物で――……。

「――つまり話をまとめると、雛と結婚するために私に手伝え、と」

偶然とはいえ、白羽の矢が当たってしまった女の子、雛の親友だった私は王子に聞き返していた。