「俺、夜居なかった日あったじゃん」


「...え?ん......、あ、あったね」


記憶を辿って思い出したのか、上下に首を振る。


直ちゃんと付き合って1週間あまりが過ぎたとき。


早速ではあったが、直ちゃんとの夜を超えた。


誘ったのは直ちゃんからというか俺からというか、


どちらからでもなく、流れ的に。


しかも彼女の家で。


夜を越したわけだし、俺は家にいなくて、


華恋とは関わらなかったあの日。


「...あん時カノジョに、慣れてるねって言われた」


握り、握り返した手。


つないだ事のある、直ちゃんとの手をつい重ねてしまう。


直ちゃんの手は、ちょっとだけ冷たくて遠慮がちに


握ってきて、安心できなくて、違和感があった。


華恋の手は、温かくて、 家族 だから遠慮なしにぎゅって握ってくれて、


落ち着けて、しっくりくる手の平。


直ちゃんとは、違った手してる。