そんなこと、もう知ってる。

ちょっと遠まわしに名前で呼べと言っているようなものだ。


「だから..."和也"って呼ぶしかないよね>」


「お利口さん」


和也という名前でしか読んで欲しくなかった。


華恋の頭に手を伸ばし、柔らかい髪の毛を撫でた。


俺の手の動きに安心したような、全てが抜けたみたいな素の顔をした君だけど、5秒経たぬ間にその顔に仮面が被される。


「犬と同じことしないでよ」


ムスっとした口調で言われ、ムスっとしたせいか、細めた目で華恋は俺を見た。


「犬と同じことしたつもりはないけどな?」


華恋は、ムスっとした割に、そこまできつい口調ではない。


本気ではないのだ。


嫌そうにしているけど、俺の手を振り払おうともしてない。


「俺の名前呼んでよ」


わざとらしく細めた目が、まだしてよ...って言ってる。


まだこうしててよ...って君の瞳から聞こえている。


「...呼んだら犬と同じことするのやめてやる」


華恋を犬扱いした覚えはないんだけど。