「あー、いよいよ結婚式かぁ!」

ヒビキは嬉しそうに伸びをした。

明日、父さんの結婚式がある。

結局僕のもやもやは無くならなかったけど、自分の気持ちは伝えたし、別に結婚に反対してるわけじゃないから僕も少し楽しみにしてる。

「でもおばさん年だから、ウエディングドレス似合うんかね」

あ‥

まぁ、悪気はないんだろうけど、ルカってば余計な事を‥‥

チラリとヒビキに視線をなげると、ルカにつかみかかろうとしていた。

「んだと!!」

でも流石に自分よりも六つも下の子に手を出すわけにはいかないと思ったのか、すんでのとこで堪えている。

「だってホントのことじゃん」

ルカはヒビキの気持ちが分かってるんだか分かってないんだか、悪びれた様子が全くない。

僕はぎゃんぎゃん言いあっている二人を眺めた。

‥‥なんか、平和だな。



その時、一陣の強い風が吹いた。

体重の軽いルカが飛ばされそうになるのをヒビキが捕まえている。

「うわっ!」

風は僕の身体の中を通り抜ける様に過ぎて行った。



「すっげー風だったな」

風はすぐに止んだが、僕は身体の震えが止まらず、その場に膝をつく。

「‥‥アナン?」

ヒビキの声が遠く聞こえた。




僕は大丈夫だと言おうとするが、身体に力が入らない。



風が‥震えてる‥‥



こんな事は初めてだ‥‥‥





嫌な予感がする──────‥‥