メタトロンは翼を広げたままアゼルを見降ろしていた。
傍には数人のセラフィム兵がメタトロンを護るように囲っている。
「お前、こんな処で何してるの?」
穏やかな口調ではあるがその瞳は鋭く、アゼルは自分の背へとスイを隠した。
メタトロンの性格はわかっている。
自分達を見逃してはくれないだろう・・・。
スイもメタトロンに対して言い知れぬ恐怖を抱いているようだ。
アゼルの服を掴む手がカタカタと震えている。
「その子は人間?」
わかっているだろうに、くすくすと笑いながら近づいて来る。
「ラファエルは知ってるの?────知らないわけないか」
アゼルがラファエルに仕えていた事を知っているメタトロンは嫌らしく唇を歪める。
「ラファエル様は関係ない!!」
その名を聞いた瞬間声を荒げていた。
恐らくラファエルは自分達の事を全て把握しているだろう。
それでも咎めに来る事もなく、見ぬふりをしてくれていた。
これ以上ラファエルに迷惑をかけるわけにはいかない。
「・・・そんな事はどうでもいいよ」
だがメタトロンは興味がなさそうに今まで笑っていた口元を歪めた。


