「はあ・・はぁ・・・アゼ・・ル、もう走れな・・」
さすがにスイの息が上がっていて、アゼルはその場で立ち止まった。
このままでいたら間違いなく天使に見つかってしまう。
もし・・天使に見つかれば殺されるか、マティへと幽閉される。
恐らくスイも見逃して貰えないだろう・・・。
アゼルは天使にも堕天使にも見つかるわけにいかなかった。
けれどこのまま闇雲に走り続けていても、スイの体力がもたない。
どんな事をしても、スイだけは護り抜く・・・
「アゼル・・・?」
不安げなスイの瞳が映る。
アゼルはスイの肩を抱くと、神経を自分の背へと集中させた。
天使の力でならスイを護れるかもしれない。
スイを抱いて何処かへ飛んで行く事だって出来る。
お前を護る
必ず・・・・!!
「駄目!!」
アゼルの背に僅かに白い羽が見えた瞬間、スイがその身体を抱きしめた。
「言ったじゃない!天使の力は使わないって!人間になるんだって!!」
それはアゼルがスイと心を通わせたばかりの頃、人として傍にいると約束した。
二度と、天使の力は使わない、と。
「私大丈夫だから。まだ走れるから!」
「スイ・・・」
大丈夫なわけがないのに、体力など残っているはずもないのに・・・
必死に自分を説得するスイの身体を抱きしめた。
どれだけスイに想われているのかを強く感じたから。
「へぇ、こんな処に行方不明の天使がいるとわね」
その声に、スイを抱いていた腕を緩めて顔を上げた。
「・・・メタトロン・・様」


