少女は両手を前で握り、切なげな瞳でミカエルを見上げている。
その綺麗な瞳は今にも涙が零れそうな程に潤んでおり、ミカエルは一瞬少女の頬に手を伸ばそうとするが、その手を伸ばす前に思い止まった。
ミカエルは行き場の失った手をギュっと握り一瞬顔を伏せるが、少女を安心させるように
柔らかな瞳を少女に向けた。
「アルフォンシア様・・ここは危険です。しばらくここから離れていて下さい」
今は安全な場所などないのかも知れない。
けれどこの場所はあまりにも危険だ。
恐らくルシファーはこの近くにいるであろうから・・・。
「ミカエル・・ごめんなさい・・・」
少女の瞳から涙が零れた。
「貴方には辛い想いを背負わせてしまう・・」
少女の顔が涙で歪んでいく・・・。
ミカエルはやり場のない手を爪が食い込む程に握りしめた。
許されるならば、少女の細い身体を優しく抱きしめて、貴女が思い悩む必要なんて、そんな顔をしなくてもいいんだと伝えたい。
謝る必要なんてなにもない・・・。
だから・・・泣かないで。
「神は・・必ず護ります。ルシファーには指一本触れさせない」
そして貴女も・・・・。
どんな事があっても・・お護りします。
「ミカエル・・・」
「そんな顔なさらないで下さい。私は大丈夫です」
貴女にはいつでも笑っていてほしい。
その笑顔を護る為ならなんだって出来る。
だから・・・
「ミカエル・・この剣を」
少女は古びた青銅の短剣をミカエルに渡した。
「これは?」
「貴方とルシファーの力は同等だわ。でもこの剣でなら勝てるかも知れない」
少女は短剣をミカエルの右手に握らせた。
「だから・・死なないで・・・!」
ミカエルは自分の右手に剣を握らせる少女の手を、そっと左手を添えて優しく包んだ。


