エデン


俺は二人の姿が見えなくなると、ロケットを手にとり蓋を開けた。

その中に入っているのは小さな写真で、俺はその写真に親指でそっと触れた。

セラ‥‥



『大好きよ。カイ』



無邪気で、いつも屈託のない笑顔を俺に向けてくれていた。

俺はそんなセラの笑顔が大好きだった。

ずっと一緒にいる‥そう思っていた。

けれどセラは二年前、俺を残して逝ってしまった。

不治の病というやつだ。

実際付き合ったのはたったの一年半、それでも俺にとってセラは全てだった。

俺はセラがいなければ生きてけない‥‥。

実際、死のうとした事もある。

結局サクヤに助けられたけど。

その時初めてサクヤの涙を見た。

分かってる‥辛いのは俺だけじゃない。

サクヤとセラの付き合いは俺より長い。

なのに俺が情けなさ過ぎて、セラが死んだ時もサクヤは泣かなかった。

サクヤは俺を立ち直らせるのに必死だったから。

アイツは、セラに頼まれたからだと言ってたけどな。

だから俺は一歩ずつ前に進む事に決めた。

けれど心に開いた穴は埋まらず、俺は他の女に拠り所を求めた。

それは全くの無意味な行為だと気づいたのは最近だ。

その行為は俺の罪を深くする。

セラへの思慕がつのるばかりだった。

‥‥それでもいいと思った。

俺に幸せになる権利はない。

セラを護れなかったんだから‥‥



ごめんなサクヤ‥‥

お前には心配ばかりかける‥‥‥



『カイ。はい、お守り』

お守りと言ってくれたロケット。

俺は唇を噛み締め、ロケットを握りしめた。