シャワーを浴びて戻ると、女が丁度目覚めたらしくボーッとした瞳で俺を見てる。
「‥‥カイ?」
俺はタオルで頭を拭きながら女に近づき、ベッドに腰をかけて軽くキスをした。
「おはよ」
「ちゃんと乾かさないと風邪ひくわよ」
女は濡れた俺の髪を弄りながら、縋るように俺の腰に手を回す。
ああ‥‥うざったい。
むせるような香水の匂いもに吐き気がする。
「‥‥カイ、愛してるわ」
言いながら女は強請るように俺に唇を寄せる。
‥‥やめろ。
俺が聞きたいのはお前の声じゃない。
俺はそれを塞ぐように舌をねじ込み、吐息ごと奪った。
「‥‥っん‥」
女は苦しそうに息を零すが、俺は更に荒々しく貪った。
そんな声さえ聞きたくない。
唇を離すと、女は充血した唇を半開きなままトロンとした瞳をしてる。
俺は女の唇を親指の腹でなぞり自虐的な笑みを浮かべた。
女は再び強請るように俺の首に腕を回してくる。
俺はやれやれと思いながら窓の外をみた。
いつの間にか明るくなっている。
‥‥今日はいい天気になりそうだ。
「‥‥あ」
「どうしたの?カイ?」
何もしない俺に焦れたのか、女が甘ったるい声をだしながら俺の頬に触れた。
「帰る」
「え!?」
俺はベッドの下に脱ぎ散らかしてあるTシャツを着て、サイドボードに置いたロケットを首から下げた。
「いきなりどうしたのよ!?」
女は焦ったのか俺の腕に縋りついてきた。
「久しぶりに従兄妹に会いたくてね」
言いながらやんわりと女の手を外した。
女の縋るような瞳はあえて無視しよう。
「じゃ」
その変わり作った笑顔を女に向けた。
「従兄妹と私どっちが大事なのよ!?」
再び女は俺の腕に縋る。
ったく、めんどくさいな。
「従兄妹」
俺はにっこり笑って言うと、今度は強めに女の手を振り払った。
俺の一言に今度は固まったように動かない。
‥‥今の内に出てこ。
「カイの馬鹿────っ!!」
外に出てすぐに女の金きり声が聞こえた。


