「‥‥ラファエルのいないラキアはかなり荒れてたな」
楽しげに地上での様子を話していたが、紅茶をテーブルに置き、真剣な表情で前を見据えた。
絶対に禁止されていたが、手を差し伸べたくなる程荒れていたのを思い出し、やり切れない思いになる。
人間に干渉しない事が神の条件。
けれど、流石にラファエルの変わりに誰かを付けた方がいいんじゃないかと思う程だった。
ラファエルのポストがそのままなのはジプリールがラファエルは生きてると言い張ったからだ。
まぁ最も、ラファエルの変わりが務まる者がいないというのも事実であるが。
だが、そろそろ限界だろう‥‥
「‥‥ラファエル様、生きてらしゃるのかな?」
その一言で、ゴンと頭を叩かれた。
「いた!」
「馬鹿な事を言うな」
「だって‥‥」
頭をさすりながら恨めしそうにラジエルを見上げる。
「ジプリールが生きてると言ってる限り生きてる」
ジプリールは決してラファエルの最後を言わなかったが、恐らく彼女はラファエルの最後を知っている。
二人が恋中であったのは知っているが、もしラファエルが死んでいるのであったら彼女は言うはずだ。
そこまで愚かな女ではない。
「お前もアークエンジェルの一員なら、仲間を信じろ」
今度は軽くレミエルの額を指で弾いた。
「‥‥選ばれたのはボクじゃないよ」
俯いて、拗ねたように口をとんがらせた。
「まだそんな事を言ってるのか?」
先の戦争の時に現れたレミエルのもう一人の人格ラミエル。
レミエルとは正反対の性格で、確かに天使戦争ではかなりの活躍を見せた。
戦争で勝利を収めた後も、気付いたウリエルが止めるまでその力を解放し続けていた。
しかしその後ラミエルはレミエルの中に消え、再び現れる事はなかったのだが。
「お前はラミエルに勝ったんだ。もっと自信を持て」
「違うよ!ラミエルはボクの中にいるんだ!!ずっと様子を窺って‥‥チャンスを狙ってるんだ!ボクが少しでも気を抜いたら必ずラミエルは出てくる!!」
「‥‥レミエル」
ラジエルはポンとレミエルの肩に手をかける。
レミエルはキュッと唇を噛んだ。
ラミエルがどんな性格か、分かっていた。
身体をとられていた時も、暗い闇の中で意識だけはあったから‥‥
ずっと闇の中で叫んでいた‥
もう止めてと‥‥
「‥‥恐いんだ」
自分にはどうする事も出来ないから────‥


