エデン


それはちょっと前の事、

いつもどうり執務室で紅茶を楽しもうとしていたら、自分を呼ぶ悲痛な声が聞こえた。

「ラジエル!ラジエル!!」

「レミエル?どうしたんだ?」

少年は泣きそうな顔で部屋に飛び込んできた。

ラジエルはレミエルを座らせると、今しがた入れようとしていた紅茶をレミエルに差し出した。

それを一口飲むと、少し落ち着いたのかポツリと口を開いた。

「・・・夢をみたんだ」

「夢?」

「・・・僕が・・僕じゃなくなる夢」

ふと視線を落とすと、ティーカップを持つレミエルの手が震えている。

「僕の中に何かがいて、僕を壊そうとする・・・」

レミエルはティーカップをソーサーの上に置くとよがる様にラジエルの腕を掴んだ。

「堪らなく・・怖いんだ・・」

「レミエル・・・」

ラジエルは椅子に座るレミエルに視線を合わす様に腰を屈め、自分を掴むレミエルの手を外すと額をコツンと指で弾いた。

「情けない顔をするな。お前も一応アークエンジェルの候補生だろ」

「・・・ぅん」

「とりあえず顔でも洗ってこい。そんな顔でウリエルにでも会ったらまた説教されるぞ」

その名を聞いてちょっと顔を顰めると、残りの紅茶を煽るように飲んだ。