「それじゃ、ヒカル行って来る」
それはいつもと変わらない朝。
タケルは毎日、親戚の手伝いをしていると言ってでかけていた。
そんなタケルをヒカルは「いってらしゃい」と笑顔で送り出す。
普段だったら、タケルが出かけた後は内鍵をかけていた。
自分が帰って来る時は戸を三回叩くから、それ以外では絶対に開けては駄目だと、散々タケルに言われている。
でも最近鍵の調子が悪かった。
戸が歪んでる所為か、日に日にしまりが悪くなっていた。
そして到頭閉まらなくなってしまった。
ヒカルは兄が帰ってきたら相談しようと、今日はそのままにしておく事にした。
ヒカルにはタケル程の危機感がなかったから‥‥。
‥‥‥ガチャ‥‥‥
その時、戸の開く音が聞こえてヒカルは振りむいた。
「タケルちゃん?」
兄が何か忘れものでもしたのかと思い、ヒカルは開こうとしている戸へと近づく。
でもいつも手ぶらで出かけてるんだけどな‥‥
戸が完全に開き、ヒカルは足を止めた。
「‥‥あ‥」


