「腹減ったろ?飯にしよ」
この家だって廃墟のようなもんだ。
電気が通ってなけりゃ、ガスもない。
だからおれが盗んでくるのは野菜や果物、肉も盗むけど、加工品だ。
いつかはヒカルにだっておれ達がティル人だってばれるだろう。
働く事さえ許されないんだって。
ごめんなヒカル‥‥
こんな辛い生活させちまって‥‥
でもいつか、こんな生活脱出してみせる。
ヒカルはおれが護るんだ‥‥!
「コンコン‥」
ヒカルが口を抑えながら咳こんだ。
「大丈夫か?」
おれはヒカルの背中をさすりながら、額に手を当てた。
少し熱がありそうだ。
ヒカルは心臓だけじゃなく身体も虚弱で、こうやって熱を出して寝込むのも頻繁だ。
「ごめんね‥‥」
「何言ってんだ」
その度にヒカルは申し訳なさそうな瞳をおれに向ける。
頼むからそんな顔するな。
身体が弱いのはお前の所為じゃない。
「今日はもう寝ろ」
「‥‥ぅん」
おれは布団をひくと、そこにヒカルを促した。
ヒカルは布団に横になると、瞳を閉じた。
最初は息も荒く苦しそうで心配だったが、そのうち穏やかな寝息へと変わっていった。
この布団はゴミ捨て場から拾ってきた物だ。
昔、住む家をなくした時、この空家と布団を見つける事が出来た。
第一身体の弱いヒカルが、寒空のなか布団も無しに眠ってしまったら間違いなく死んでしまう。
だからあの日は必死だったなと、今でも覚えてる。
汗で額に張り付いているヒカルの前髪にそっと触れた。
柔らかい息がおれの手をくすぐる。
‥‥ヒカルは生きてる。
おれはホッと息を零して、布団の横に置いてあるフォトフレームに手を伸ばした。
そこに映っているのは幸せそうな4人の家族。
‥‥父さん、母さん。


