「でも実際に現れてる。まぁ、僕の妄想かもしれないけどね」

「私を妄想に使うな」


ばしっと近くにあった本で頭を殴られる。


ハードカバーに負けた、僕の頭。


……痛。


「妄想に使うなと言うなら、僕の前に現れるなよ。とっとと消えてくれ」


彼女がいると小説は出来上がらないし、集中もできない。


ため息まじりに、彼女から本を取り上げる。


「……」


彼女にしては珍しく、何も言い返してこなかった。


え、もしかして……言い過ぎた?


少し俯いた彼女の表情は、読み取れない。


「ご、ごめん。言い過ぎたよ」