数回、目の前にいる男子生徒と愛海が会話する。親しそうに名前を呼んでいるから友達なんだろうと理解する。
額の痛みは段々と薄れていく。次第に意識も薄れていく。
数分経つとバタバタと足音を立てて先ほど覆いかぶさった生徒が戻ってきた。手元には色が濃い青のハンカチ。

ぴと――

――冷たい……

「しばらくこれで冷やしとけよ」

額に当てられて気付いた。わざわざ自分のハンカチを濡らしに行ってくれたということに。だから少し濃い青なんだと。

――あれ……

「…………」
「何かこの子フリーズしたんだけど」

忘れてたと言うように愛海が「あ」と声を漏らした。
ふわっと莉緒の体が後ろに倒れた。再びゴッという鈍い音と共に。
意識を手放す前に聞こえたのはチャイムの音。最後に見たのは3人の驚く表情。

「え、何!?」
「莉緒、男の子苦手なんだって」
「山本さん言うの遅い気がするんだけどな」
「うん。さっきの廉の時もそうだった」

3人がこんな会話していたなんて、倒れて気を失った莉緒は知る由もない。