次の日、自前の黒い傘を持ってバイトへ向かう。


しつこいぐらいの雨だ。

もう二週間も降り続けて居るのに、ユイは全然来ないし。





やっぱり、もう・・・




「あれ、奏汰さん!」

ハッと声がして顔を上げると、少年賢治がゴミ袋を持って裏口の所に立って居た。


「早いな、お前朝番か?」


「そっすよ~一週間だけなんで」


適当に会話しながら店に入って、そのまま控え室に向かう。


俺が着替えてると、厨房の方で良いにおいがした。



「奏汰さん、朝飯食いましたー?」


そう声がして、エプロンを結びながらホールに出ると、少年賢治がミートソースのスパゲティを持ってカウンターに立っていた。



「てかもう、昼飯っすけどね」

「俺に?」


「そっすよ!俺もう食べちゃったんで」


俺は「へえ」と言いながら席につくと、出されたスパゲティにフォークを絡めた。


「うん、無難」


「無難ってなんすかー!あ、今日おっさん女と用事出来たんで遅れるって言ってましたよ」


「女?峰子さん?」

「あ、そうそうその人!何か前にフラれてるらしんすけどね!」


そう言って少年賢治は笑ってた。