店に着くと、カウンターでマスターと高校生ぐらいの少年が話して居た。

定休日だった為に、店には誰も居ない。



「おお、奏汰」

「どうしたんですか?」


「こいつ、俺の甥」


そう言ってマスターが指差したのは、少年だった。


「甥?」



「坂川賢治っす!」

「ああ、は、萩中奏汰です」


「かくかくしかじかで一週間だけ臨時でバイトさせることになったからさ、宜しく頼むわ」


マスターにポンと肩を叩かれて、俺は曖昧に「ああ、へぇ」と答えた。


用と言うのはこのことだったのか。




「こいつパティシエとしての実力は負けてないから、厨房入って貰うよ。奏汰は今まで通りフロア入っててくれれば良いから。」



「あ、ねぇねぇ!奏汰さんって呼んでも良いっすか!」

「ああ、別に」

「やった!俺賢治で良いんで!」


やけにはしゃぐ少年賢治を振り払って、カウンターの奥に入る。



「奏汰」

「はい?」



「賢治こき使って良いからさ、ユイちゃんのこと何か分かったら、遠慮すんなよ?」


「シゲさん・・・」



もしかしたら、俺が余裕を持てる為に、臨時バイトなんて雇ったのだろうか。




本当、世話無いな。