あたしは、彼を「奏」と呼んだ。
だって奏はあたしを、名前で呼ぶから。
分かっていた、深入りしちゃ駄目だって、それなのに、あたしはこの温もりを手放せずに居た。
奏や、マスターさんの優しさに甘えていたんだ。
「今度雨が降ったらさ、何処か遊びに行こう」
奏があたしの頭を撫でながら言う。
嬉しかった、訳も分からず、ただただ嬉しくて仕方が無かった。
だけどもう、終わりにしよう。
奏の悲しむ顔を見たくないから・・・これで、せめて、この時だけ。
「じゃあ次はデートだね」
「おう」
「・・・ん」
笑顔で、終わりにしよう。

