「お、ユイちゃん」
「こんばんは、マスターさん」
何故かユイはうちの喫茶店の常連になっていて、いつも仲良さげにマスターと話している。
マスターは話が上手い。
ここだけの話、マスターとの世間話の為に来る客も、そう少なくは無い。
「じゃあまた後でね」
ユイと少し話してから、マスターは厨房に消えて行った。
「今日は忙しいんだね」
「まぁな、休日だし」
そう言って店の奥にある小さなステージでジャズを演奏するバンドを見る。
「ライブ在るんだ」
「時々な」
マスターの趣味で、と付け足し笑った。
「奏は何か弾けないの」
突然の質問に驚いて顔を上げると、俺は苦笑して「サックス」と答えた。
「今はやらないの?」
「・・・ああ」
今はもう、な。

