「奏、来たよ」 いつからか、ユイは俺のことを「奏」と呼ぶ様になった。 子猫がやっと懐いた様な感覚だろうか。 まぁ「あんた」と呼ばれるよりは全然良いんだが、まだ少し歯痒い自分が居た。 「おう、座るか」 カウンターの端の窓側の席が、ユイの特等席だった。 いつも通り、少し冷ましたホットミルクを出すと、ユイは小さく微笑んでそれを口にする。 今日も外は雨だった。