あの赤い傘は鞄に閉まってある。
彼女は、何処から来たのだろう。
何処へ行ったんだろう。
名前は?歳は?
何時の間にかポンポン疑問が浮かび上がって来る。
って、何考えてんだ、俺。
「お兄さん、お会計」
「あ、はい」
代金を受け取って、「有難うございました」と出て行く客を見送る。
テーブルを片付けていると、
カランコロンー
また店の扉が開いた。
反射的に「いらっしゃいませ」と言うが、直ぐに笑顔を崩した。
「早いですね、マスター」
「そう嬉しそうな顔するなよ~」
していない。
マスターと呼ばれるこの人は、シゲさんと言って、この店の店主だ。
プライベートではシゲさんと呼んでるが、殆どはマスターで通してる。
「峰子さんからデートのお誘い来ちゃったんだよ、お前木曜空いてるか?」
気さくなおじさんだ。
別に良いですよ、と答えてカウンターに下げたばかりのコーヒーを置く。

