奏が落ちた赤い傘を拾い上げて、二人の間に差す。 「約束して」 「・・・約束?」 「この傘の中だけでは、 本当のお前自身で居て。」 「・・・・・」 「今すぐ過去と向き合えとは言わない。ゆっくり、時間をかければ良いから。だからこの傘の中だけでは、嘘はつくなよ。」 そう優しく言った奏に、あたしは黙って小さく頷いた。