傘恋愛 -カ サ レ ン ア イ-







「ユイは死んだんだよっ・・・もう、あたしには、何も無いんだ・・・」




目から何かが零れた。

後から、後から零れて来て、奏のシャツが濡れていった。


「まだ、あるだろ」


「・・・なに、が・・」







「俺と、居た時間」





思いもしなかった言葉だった。




「甘いのも苦いのも苦手なお前も、猫舌なお前も、音楽が好きなお前も・・・全部、俺が知ってる。」

「奏・・・っ」


「お前の帰る家なら、俺がつくる」




形をつくった「涙」が溢れた。


奏は・・・ユイでも、誰でもなく、「あたし」自身を見てくれる。

そんな事実が、嬉しくて仕方が無かった。





「ごめんなさい・・・ユイを、恨んで・・・ごめん、なざい・・・ッ・・・」


「うん、うん・・・」



「ごめんなさい・・・っ」






奏の腕の中で、ひたすら謝った。



もう届かない、ユイへ。





「貴女の未来を奪って、ごめんなさい」と。