「お帰りー。」

「わっ、真郷さん!」


ふわふわした茶髪が首筋に当たり、くすぐったいと千夜は笑う。


「兄貴…気配消して近づくのはマジで止めろ、心臓に悪い。」

「これくらい気がつかなきゃねぇ。で、或茉はどうだった?」

「とても素敵でした。みんな優しかったし、食べ物も美味しいかったですよ。」


笑顔でこちらを見る千夜に、真郷は微笑み返した。

そのままちらりと緋那を見て不敵に笑い、すぐに笑顔を消して千夜に向き直った。


「或茉の景色は…君が居た世界とどう?」

「えっと…ちょっと昔っぽかったかな?服や建物は混合しちゃっても、通貨は前居た世界と同じだし…。」

「友達は?」


この質問には首を横に振り、あの街並みを思い出す。

追い求める友人の代わりに、見たこともない様々な人々。

突然飛ばされた知らない世界。

この人たちがいなければ、千夜はどうなっていたのだろうか。


「千夜?大丈夫?」


いつの間にか目の前にいた架凛に、大丈夫と小さく笑う。