漸く人混みが途切れたところで、彼は疲れたと言いお茶屋に入った。
端の方の席で向かい合いながら、千夜は紅茶を一口飲む。
ほのかな香りに口元を緩めたのを見て、緋那はちらりと足元を見た。
「それ…明らかにもらいすぎだろ…。」
「だってみんな優しいんだもん。緋那って人気者なんだね。」
違うと短く返答をして、緋那は手元のミルクコーヒーに手を伸ばす。
「お前も昨日見ただろ、俺のクラフト。あれは誰もが持てる力じゃない。選ばれた者が選ばれた力を得る。クラフトを持つってことは同時に地位を得る。」
千夜はまさか突然クラフトの話題になるとは思わず、曖昧に首を傾げた。
「…本当に何も知らないんだな。」
「異世界から来たんだもん。」
「旅人ならこれぐらい知ってると思ってたぜ。」
違うと何度言えばわかるのだろうかと考える間に、彼の話は進んでいた。
「この世界には7つの国がある。アルフレア、カーシャ、マスドワ、ウィンビス、サラ、ユートピア、そしてこの翠鳳国。」
