「こいつはただの迷子。俺は関係ねぇ。」

「関係なくないだろう。仲良く一緒にお饅頭食べながら歩いてて。」


ミリィが笑いながら旦那を見る。

彼は苦笑いをしながら、千夜に袋を差し出す。


「まぁまぁ…それよりも、これもぜひ食べてくれ。昨日とれたばかりの果実だ。」


中を見ると、鮮やかな果実が5・6個入っている。


「わぁ…ありがとうございます!」

「それは俺が持つ。ほら行くぞ。」


緋那に引っ張られるようにして、2人は店を離れた。


「…あの緋那斗が荷物を持つだってさ。」

「アスカル、あれは絶対真郷くんに言われてるのよ。」

「そうかなぁ…。」


人混みに消えていく2人を見送りながら、アスカルは首を傾けた。



* * *

果物屋を離れると、緋那に声をかける人が次々と現れてきた。


「よぅ、緋那斗!」

「まぁ弟くん、久しぶり。」

「緋那斗、その子は彼女か?」


緋那は違うと叫びながら通りを歩く。

一方、千夜は次々とお土産を手渡され、笑顔でお礼を言いながら歩いた。

だが一向に、懐かしい友人の姿は見当たらなかった。