声がした方を見れば、美味しそうな果物を売っているお店があった。

入口では、額に鉢巻きをした若い男性が手を振っている。

細身で長身な彼に、緋那は近づいて行った。


「アスカルさん、ども。」

「久しぶりだね。騎士団はお休みかい?」

「ん、まぁ。」


ぽつぽつと質問が繰り返されているのを、千夜は通りから見ていた。

そんな置いてきぼりになった千夜の肩に突然手が乗っかり、小さく悲鳴をあげてる。


「わわっ!」

「あぁ、驚かせて悪かったね。あたしはアスカルの嫁のミリィ。お嬢さん、あんた、緋那斗のこれかい?」


アスカルとは対称的で大柄な彼女は、人の良さそうな笑顔で左手の小指を立てる。


「あ、あたしは千夜っていいます…緋那は昨日からお世話になってる架凛さんて人のところで知り合いまして。」

「へぇ、あんた架凛に用事でもあったのかい?」

「いや、昨日から居候を……」

「ミリィ、もういいだろ。」


後ろからぐいと腕を引かれ、振り返ると緋那が呆れた顔で彼女を覗き込んでいた。