陸の両親は冒険家で、年に数回しか帰ってこない。

一人息子の彼は、父親の友人の家に預けられた。

旧知の仲らしく、元々家も近かったので、両親は安心して陸を預けられたのだ。

預けられた先には彼と同い年の一人娘がいた。

これがまさに千夜である。


「ちょうど同い年とか…すっごい偶然。」

「ん?何か言ったか?」

「何でもなーい。それよりもさ、陸の髪また明るくなった?」


透き通るような金髪が、桜を背に輝いている。

いつ見ても絶景だと千夜は思う。


「日に日に明るくなっちまうんだよ…そろそろ黒にするか。」

「桜が散ったらあたしが染めてあげるから、それまではダメ。」


何でだよという言葉を聞かず、千夜はもう一度桜を見た。

先ほどよりも少し、桜の花が散っているような気がした。